農業が支えてくれた、私の子育ての日々から
平成30年4月17日(火)
ノラソラ企画運営チーム 佐藤
実は、出産するまで、「こども」という存在が苦手でした。
私もかつては「こども」だったはずなのに、大人になってみると、言葉も通じない、どう接して、どう遊んだらいいのか分からない。
なので、そんな未知の存在である「こども」が、苦手というより、もしかしたら「どうしたらいいか分からない」のほうが正しかったのかもしれません。
「山で、たくさんのこどもや孫に囲まれて農業する、しあせなおばあちゃんになりたい」という夢を持って十日町市に移住しましたが、
矛盾していることに、娘を妊娠しているときは
「本当にこの子を愛せるのだろうか」
「本当にちゃんと子育てできるのだろうか」と、とても不安で「こどもとの遊び方」「あやすコツ」などいろんな子育てハウツー本を読み込みました(笑)
それが出産してみると、全く世界は変わったのです。
娘と出逢ったその日から「この子にしあわせなおばあちゃんになってほしい」と本気で思いました。そして娘が世界で一番愛おしいように、娘以外のどの子も同じように愛おしく、かけがえのない存在に思えました。
これが母性なんでしょうか、不思議と心から沸き起こるあたたかい気持ちに満たされる一方、「農業はタネをまき、収穫し、実った子がお客様に届くまでを見届けられるけれど、私は娘がどんなおばあちゃんになり、どんな人生を歩むのか、最後まで見届けられないのか」と悲しい気持ちになりました。
だからこそ、この子のために、農業者として今できることをしたいと、気持ちが固まりました。
さて、子育てがスタートし、不安だった私を支えてくれたのはハウツー本ではなく、「農業」でした。
私の農業の師匠は、私が移住したときから、農業を通して生き方を教えてくださいました。子育てをしながら農業を続けるなかで、作物と向き合うそのエッセンスが、すべて子育てに通ずるものだと気付かされました。
■ 農業は本通りにはいかない。毎年の環境、気候、土壌条件、いろんな要素が絡み合い、毎年同じでない。だからこそ、作物の変化をしっかり観察し、声なき声を聞き、成長にあわせて欲するものを見極め、作物が育つお手伝いをする。
■ こうあるべき、は農業にはない。
■ 農業は観察力、瞬発力、実行力。
■ 苗作9割。苗踏みも取り入れて少しの厳しさとともに、短くても太い苗を育てる。
■ 農家は作物が育つ環境を整えてやるだけ。
■ 作物を信じ、待つことが、仕事のときもある。
これらは一部ですが、あぜで教えていただいたこういった話や考え方は、子育てでも同じでした。師匠たちが「米作りは、子育てと一緒」とよく話してくれましたが、出産してやっとその意味がわかりました。
また、7ヶ月ごろから、仕事場(田畑)にも娘をよく連れていくようになりました。
そうすると、それはそれは本当に農業が何十倍も楽しく、そして格段に子育てがラクになりました。
見守る目が増え、多様なひとがいる農村。
無限のおもちゃがある山。
遊び足りないくらい果てしなく広いフィールド。
その環境をめいっぱい楽しみ、いろんなおみやげを持ち帰る娘をみる楽しさ。
そんな日々を重ねる中で、地域の人が
「むかしは保育園なんてなくて、集落自体が保育園のようなもんだったんだ」と話してくださったり、
「こども1人育てるには、むら1つ必要」というアフリカのことわざに出遭ったりする中で、私のなかで、農業・農村と、子育てが繋がってゆきました。
農村や農業のもつ力を生かして、農村をまるごとようちえんに見立てたような場所をつくりたい。どうやったらできるだろう?
そして「森のようちえん」という形が北欧にはあることを知り、夫を通じて代表の馬場さんとも話す機会を経て、みんなで思いを形にしてゆき、ノラソラの活動へと仲間入りするようになりました。
ノラソラのメンバーは保育業界出身の方も多く、会議での議論では、毎回発見も多く、いつも学ばせていただいております。
メンバーの皆さんの熱意や、こどものかける熱い思い、経験から生まれた子育てに関する考え方やアイデア、今も学び続ける姿に、「なんてすごい人たちがいるんだろう」といつも感動し、そしてドキドキします。
私は保育に関してはド素人ですが、フィールド提供者として、また農業者としてできることを精一杯メンバーとしてやらせていただきます。
この十日町で、こどもたちと、お父さんお母さんが、自然体であたたかい1日を過ごすお手伝いができれば幸いです。
そして、私たちもまだまだ「十日町には、どんな森のようちえんの形がいいだろう」と勉強中です。
ぜひ一度、遊びにいらしたり、仲間になってくださるととても嬉しいです。
お会いできるのをたのしみにしております!
越後妻有森のようちえん ノラソラ
佐藤 可奈子